PIECE COLLECTOR


【手記】


×月×日 

私は今日、恐ろしい事をしてしまった。
あの人に強要されたとは言え、大勢の人前に
自分の裸体を晒し…夫ではない人と交わった。

夫に導かれ入った部屋には煙が立ち込め…私の頭は朦朧とした。
そんな状態だからはっきりは覚えていなかったが
部屋の一番奥には赤のビロードの布の引かれた祭壇があり
十字架が逆さに飾られていた。

その前にはまるで悪魔の様に鎮座する我が夫が居て
メイドや友人達と男、女の区別なく交わっていた。
蝋燭の明かりの中…いくつもの裸体が蠢くその景色はまるで
書物に書かれる地獄そのものの様だった…

気が付けば私も床に横になり…庭師達の逞しい腕に抱かれ…
快楽を貪っていた。

あぁ!神よ!私は姦淫を犯してしまいました。
でも私が恐れるのはその罪そのものではなく…
それを拒絶しなかった私の心が恐ろしかった。

神よ!憐れなこの羊を悪からお守り下さい。
誘惑に狂ってしまわないよう…自らを律する力を下さい!


+++ +++


×月×日

夫は悪魔であると私は確信した。
朝、私は自分の罪に泣き濡れ、一睡も出来ないまま
食卓へと座った。

メイドたちは夕べの狂った様に乱れていた事など
覚えていないかの様に済ました顔でいつもの様に奉仕した。
目の前に座った夫も同じ様に朝の挨拶を皆にして
私に…まるで世間話でもする様に夕べの私の行動を話した。

どんなに乱れたか…何人と交わったか…
どんな言葉を言ったのか…

それが聞えている筈のメイド達も知らぬ顔で業務をこなし
私は只、その羞恥に耐え切れず食事も取らずに席を立ち
部屋へ帰り又、泣き濡れた。

それからどれ程時間が経ったのか…外は暗くなっていて
ドアをノックする音が聞えソレを開くと夫が立っていて
私の手を引き、再び昨日と同じ狂った世界へと私を連れて行った。

拒絶するつもりだった…ソレこそがこの試練に求められし
私の‘なすべき事’の筈だった。

只、彼の手に持たれた蝋燭のオレンジの光が彼を照らし
その美しく端正な顔が妖しく微笑み…その口から出た卑猥な言葉が
内なる官能を誘い…自由を奪い…そして…意思を奪い…
私を再び愚かに狂った楽園へと溺れさせた。

そして半狂乱に乱れる私の手を引き祭壇へ連れて行くと
そこにはいつからそうなってしまっていたのか…
庭師の一人が拘束されていて…腹を裂かれ絶命していた。

夫は彼の体内から赤黒い塊を取り出すと
それを片手に私を仰向けに倒し…何度も何度も挿入しながら
私の口をこじ開け、その塊から出た雫を含ませた。

余りに部屋が薄暗く…それが何かは分からなかったが
その雫はとても甘く…錆びに似た味がした。

そして何度も何度も二人で絶頂を迎え…気が付いたら私は
自室のベッドで朝になって目が覚めた。

何度も体内に夫の雫を注がれた私はきっと
身ごもってしまうでしょう。
そうしてあの狂った宴の末授かった命は…育つ体内の子供は…
果たして‘人間の子’であるのでしょうか…

どうしてこんな所へ嫁いで来てしまったのだろうか…
これは神から私へ与えられし試練なのでしょうか…
どうして私はあの誘惑に負けてしまうのでしょうか…

神よ!どうかお救い下さい。


+++ +++


×月×日


神よ!どうか抗う力を!


+++ +++


×月×日

神は私を見捨てた。自分の予感どうり
私は身ごもり、お腹はみるみる膨れその姿は
まるで醜い蟲の様だ。

こんな子、産まれなければ良い。きっと悪魔の子に違いない。
何食わぬ顔で大きくなり…
きっといつかこの家を滅ぼしてしまうだろう
狂った世界に似合う子になるだろう…

滅ぼせばいい。
全て!全て!悪魔の子にふさわしい所業を!
この世を血に染めるがいい!

あぁ!どうか産まれないで…育たないで…


+++ +++

×月×日


生まれた子供が生きていた。
庭に埋めたつもりだったが泣き声で気がつかれたのか
メイドが抱いてあやしてるのを見た。
驚いて埋めた場所に見に行くが掘り返された後があり
中にあの子は居なかった。

こんな事なら殺して埋めればよかった。
でも…悪魔の子だと分かっていてもその無垢な瞳に…
その手の小ささにほだされて…命を奪えなかった。

ほの温かいその温度に…その綺麗な顔立ちに…
生まれたばかりだと言うのにあの子は
父親にそっくりの綺麗な顔立ちをしていた。

人の子である筈が無い。
人の子である筈が無い。
人の子である筈が無い。

私の子である筈が無い。
生きている筈が無い。
生まれた筈が無い。

あの子は…存在する筈が無い。


+++ +++


×月×日

今日、珍しく日中に夫が私の部屋を訪ねた。
不意に夫はあの…誰にも言わずに開けた部屋の穴を
隠していた絵を取り払い少し覗くと私に
「この穴は?」と問う。
「知らない」と答えると私に覗く様に指示し、

そっと壁に目を凝らす私の体を愛撫し始めた。
驚いて夫を見ると
もう少ししたら面白い物が見れるから…
と引き続き、覗くように言い、私の体に手を這わせた。

あの子の部屋にそっと入った男二人が昼寝中のあの子を
手錠で縛りつけ、服を脱がし舐め回し始めた。
起きて驚き、助けを求める彼が泣き叫びながら
犯されるのを見ながら…私は夫とともに絶頂を迎えた。

いつも君がこの穴を覗きながら何をしてるのか知ってる。
もう少し君の‘楽しい時間’に彩を持たせてあげようと思った。
と彼は私の顔を見て妖しく微笑んだ。

彼の微笑みは悪魔そのもので…魅入られた私は…
もう…正常に…戻れない…


+++ +++


×月×日

どんどん壊れていく自分に
もう耐えられない
本日、全てを亡くしてしまおうと思う。

丁度良いモノも手に入った。
これで…皆、消えてしまえば良い。
神も!悪魔も全て!全て!



消えてしまえば良い…

+++ +++


【続く】
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