PIECE COLLECTOR

 



【一話】


俺のモノクロームの世界の中で
君だけが‘特別’に見えた…

本当はあの時君を殺すべきだったのかも知れない…
そうすればこんな想いはしなかっただろう。



俺はずっと‘生きる’という事さえ知らずに…






〜 Prologue 〜






「ねぇ…そこのハンサムさん?…私をどこか連れて行って…」

退屈潰しに行ったバーで隣に座った女が
俺の顔をチラリと見た後にこう声を掛けてきた。

もうすでに何処かで飲んできたのだろうか…
その少し呂律の怪しくなってきた口調で
黙ったまま彼女を見つめる俺の方を向き更に話を続けた。

「もう何も信じられないのぉー…死にたいのよー…
信じてたのにぃー…もう…嫌なのぉ…ねぇどこか連れて行ってよ…」
そう投げやりに言うと前もって頼んでいたのか
バーテンの持ってきた酒をひったくる様に取ってぐっと飲み干した。

「信じるって…何…?」
と首を捻る俺に
「さぁ…わかんないわ。」
と面倒くさそうに答える女に
「信じるって…どんな事?」と更に聞く俺に向き直り
彼女は俺の口をキスで塞いだ。

「難しい話は要らない…ねぇ連れ出して…」
そう言いながら俺の首に手を回し
「私を壊して…」と耳元で甘く囁いた。

誘われるままにモーテルに行き
部屋に入るなり俺のボトムスの入り口を開き
モノにしゃぶりつく彼女…

「シャワーは…?」と聞くと
「良いのよ。もう何でも…気持ち良ければどうでも良いの…」
と卑猥に笑い彼女は俺の服を脱がし、固まる俺の体を愛撫した。


どいつもこいつも…
…享楽ばかりを貪りたがるんだな…オカシイのは父と
その周りの人間ばかりと思っていたが…



…人間とは…何て醜いんだろう…



そんな事を思いながらも拒絶する理由も見つからず
只、彼女の願うまま享楽を与えた。

何度も何度も快感に身を捩っては俺ではない名前を呼び
「もうこのまま殺して…もうどうにでもして!」と繰り返した。

「分かった。君の命を貰い受けよう…」と告げ、行為を続けながら
ベッドに放り出していた自分のコートからメスを一本取り出すと
彼女が絶頂に達し、仰け反った瞬間にその首の頚動脈を一気に切り裂くと
血は壁から天井に向かって一直線に上った。

目を見開き口から泡を吹き痙攣する彼女の締まる膣に思わず達すると
その彼女の耳元に顔を近づけ
「ご提供…ありがとう。大事にするよ」と礼を告げ
その体で存分にメスを走らせて手と足と頭と胴体を切り離し
内臓を取り出しバスタブにそれらを放り込んで洗った。

その際、跡が残らない様に自分の精液の残る子宮は切り離し
いつも持ち歩いてるビニール袋にそれを入れ、口を縛った。
そして洗った胴体はそっとベッドに寝かし手足は箪笥にしまって
頭部は自分の研究の為に使わせて貰おうと鞄に入れた。

そしてモーテルに入った時と同じ様にサングラスを掛け
身を縮めて低くし、無言で金を払い、出ようとした瞬間…

「あの…ミスター…部屋の前にこんなモノを落とされてましたが…」と
ここの従業員らしき少女が一枚のカードを俺に手渡した。
それは先程自分が手にかけた女性の勤務先らしき所の
発行したIDカードで…写真と番号と住所と名前…
シンシア・ベインと書かれていた。

そうか…この子(頭部)はシンシア…と言うのか…

そんな事を今更思いながら、拾ってくれた少女に礼を言おうとして
彼女をしっかり見据え、俺はそのまま固まってしまった。

こんな場末のモーテルで働くぐらいだから
ソレ相応の汚れた雰囲気の女性だと思って話を聞いていた。

特に華美な顔をしてる訳でもない…
ましてや滅多に人に関心を抱かない俺が‘好み’などある筈も無く
一目ぼれ…とか言う現象とも思えなかった。

ただ、薄汚れたホテルのこの背景を背負って立つ彼女は
場違いな程澄んだ清浄感があって目が離せなくなった。

凍りつく自分を何とか動かし
「…彼女は…まだ寝ているからそっとしておいてやってくれ」と
やっとの思いで微笑み、告げると
何を誤解したのか「お優しいんですね…」と彼女は微笑んだ。

とりあえず早く逃げないといけない俺は彼女に合わせて微笑むと
「あ、お車までお荷物をお持ちします!こんなサービスでもしないと
こんな古いモーテル経営していけないみたいで…」と
俺からひったくる様に鞄を持った。

思いのほか重かったのか…彼女は鞄を持ち上げ損ね…
ひったくられた荷物は床を転がりその勢いで頭部が転げ、
その瞳が少女を凝視した。

「ひぃぃぃ…」と腰を抜かし、小さな声を上げた少女の喉に
すかさず出したメスを当て
「…余計な事をするから……」
とため息をつきながらメスで彼女を脅し、彼女の手足を縛り、
車に乗せ、現場から遠ざかった。

そして何事も無かったかの様に家に帰りつき、
拘束したままの彼女を肩に背負って玄関のドアを開け、鍵をかけた。
そして一つの部屋に彼女を放り込むと口に貼ったガムテープを剥がし
彼女をじっと見つめた。

どれ位が経っただろう…

「私の顔に何か付いてますか…?」と彼女は間の抜けた質問をした。
「……へ?」
「…いえ…じっとご覧になっているので…」と困った顔をする彼女に
思わずあっけに取られ、途方にくれた。

普通なら「殺さないで!」とか「私をどうするの!」とか…
恐怖に引きつった顔をして命乞いでもするもんじゃないのか…?
少なくとも今までは皆そんな反応だったんだが…

彼女は一体…何を考えてるのか…
恐怖でおかしくなった…とか…。ヤケクソになった…とか…
どんな状況を考えてもこんな反応をする理由が思いつかなかった。



【続く】
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